崔真淑さん
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 名古屋市長選挙・アメリカ大統領選挙・衆議院議員選挙では「減税」という共通のキーワードが出てきました。今回は、なぜそのような傾向が強くなったのかについて経済の視点で考察します。

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 多くの先進国で、給付金などの支出を小さくし、減税ありきの小さな政府による効率的な財政支出を求める声が大きくなっています。

 しかし、現実は正反対の動きになっているようです。「The Economist」の記事「Governments are bigger than ever. They are also more useless」では興味深いデータが示されていました。

社会インフラへの支出レベルは低下

 先進国に共通しているのは、社会保障、病院、住宅支援、年金、貧困対策など給付への支出レベルが増加する一方で、社会インフラへの支出レベルは低下しているのです。例えば、アメリカでは、給付金によるばら撒きの割合はGDP比15%へと増加し、1953年に比べると5倍にまで増加しています。OECD諸国の平均で見ても、1980年のGDP比14%から2022年には21%に増えました。

 では、社会インフラなどの公共サービスはどうか? アメリカは、1953年にはGDP比で25%以上あった公共サービスへの支出を低下させ、今ではGDP比約15%にまで減少していることが報告されています。そして、給付金を増やすために公共インフラを縮小する傾向が、先進国全体で起きているのです。

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