
札幌を回る前に池田町で小学校へ寄って、みんなで雪を固めて水をかけ、夜間に凍らせてスケート場をつくったことを思い出す。何かにつけて「町長の息子が」と言われて、居づらかったことも、忘れていない。4年生のときに学校近くの道場で始めた剣道は、三段まで昇格し、拓銀へ入ったころまで続けた。中学校でみせてもらった卒業アルバムに、剣道着姿の写真があった。生徒が減ったためだろうが、校舎がひと回り小さくなっていたのが気になったが、北西にみえた十勝連峰の山々が故郷の重みを感じさせてくれる。
幸いなことに拓銀破綻の後、外資系銀行の札幌支店長を9年務め、さらに札幌に本拠を置くコンビニチェーンへ招かれた。『源流』からの「故郷のために、北海道の人たちのために」という水路は、途切れない。
フランチャイズから直営店主義に変えて生まれた一体経営
全国規模の大手コンビニは、多くをスーパーマーケットの会社が生み、スーパーの地域補完の形で店が増えた。だが、いくつかの親会社のスーパーが凋落し、子会社だったコンビニが柱に替わったところが続き、いまや強かったはずの全国コンビニも踊り場に差しかかっている。
日本のコンビニが生まれて半世紀を迎えるなか、フランチャイズ制をずっと変えなかったことに、問題点を感じている。全国ブランドと言っても地域、地域の店主の集合体で、本来なら共存共栄していかなければいけないのが、本部がフランチャイズ料を取っているから個店の収益性が堅固ではない。
セコマが持つコンビニ「セイコーマート」は関西などから撤退し、茨城県と埼玉県のほかは北海道に千店以上が集中し、8割以上をフランチャイズ制から直営店へ切り替えた。共存共栄ではなく、一体経営だ。2009年に社長になって、地域密着路線を、さらに強化した。過疎地域へも出店し、北海道の産品を活かした商品もつくる。
2020年4月に会長となって、2022年から北海道経済同友会の代表幹事を務めるなど活動領域は会社の範囲を超えている。70歳。『源流』が河口へ近づくのは、まだ先だ。
ただ、いつのまにか、休日に庭づくりをするようになった。父が晩年にやっていた際に「自分はあんなことはやらない」と思ったが、どうも花や木を育てるのが好きのようだ。『源流』は、思わぬ方向へ、進路を取るかもしれない。(ジャーナリスト・街風隆雄)
※AERA 2024年12月2日号