●真の争点は再分配政策

 マクロ経済環境の整備のために、デフレ脱却を財政再建よりも優先し、旧三本の矢で言うところの「第一の矢」(金融緩和政策)と「第二の矢」(財政拡張。消費税増税延期、補正予算)を用いるべきことについては、細かな手段の相違はあれ、与野党いずれが経済政策を決めるとしても、やるべきことに大差はない。

 繰り返しになるが、野党勢力はこの点に早く気づいて、経済政策に関して是々非々で臨むべきだ。

「第三の矢」(成長戦略。規制緩和など)はアベノミクスのスタート時から必要性が強調されているが、実際に成長を伸ばすようなイノベーションは、計画してその通りに誘発できるものではない。また、既得権を持った勢力の抵抗が大きく、現実問題として急に進められるものではない。もちろん、特区の利用などを梃子とした規制緩和は進めていくべきだが、与野党どちらも「地道に進める」以外に手はないし、国政選挙の大きな争点には馴染みにくい。

 野党勢力が政策を練り上げて真に訴えるべき分野は、年金や生活保護、教育費の補助などを中心とする「再分配政策」ではないだろうか。「成長」は政策によって人間がコントロールできないが、「分配」は人間が決められる。

 現在、与党は、厚生年金などの公的年金を実質的に削減しつつ、確定拠出年金やNISAなどの自助努力制度を整備する方針であるように見える。これは、正しい方向の努力の一つに思えるが、改革のペースが遅いし、公的年金制度は全体として上手く行っているとは言い難い。

 わが国でも経済「格差」に関心が高まっており、再分配政策の全体的な改善と適切なセーフティーネットの設計に対する必要性は大きい。ここは野党の知恵の絞りどころである。

 他方、与党側には、マイナンバーを活用した給付付き税額控除(負の所得税)を推進するなど、再分配政策の合理的改善を図る道筋があるように思える。分配政策でも遅れを取るなら、近い将来、現在の野党勢力が消滅することも非現実的ではないように思われる。

 今一度、野党の奮起を期待したい。

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