民進党をはじめとする野党勢力は、金融緩和の維持ないし拡大の必要性を認めながら、民主党時代に消費増税を決めたことが「自分たちの間違いだった」ことを認めつつ、消費税率の10%への引き上げ延期に賛成するだけでなく、税率を暫定的に5%に引き下げるとでも主張すべきだろう。
デフレ脱却を確実にするためには、財政的な拡張を行いながら、円高を阻止するために金融緩和策の追加を用意しておくような組み合わせが適切だ。この点に関しては、安倍政権の言動の方により安心感がある。
加えて言うなら、民主党政権時代の残念な状況を有権者に思い起こさせる、岡田氏、枝野氏などの方々が民進党の要職にあって、選挙運動の前面に出る「顔」であることも野党側にとっていかにも不利な材料だ。
国民の心の中にある「民主党政権のトラウマ」こそが、支持率における安倍政権の最大の資産であることに野党勢力は率直に気づくべきだ。
●野党はどうしてもっと「舛添・甘利」を突かないのか
与党側は、安倍首相が本心では目指しているらしい憲法改正を、今度の参院選の争点にするつもりがない。
世論調査的に、改憲に反対がやや多いのだから、これは当然だろう。野党がこの点を訴えることに一定の有効性はあろうが、大手メディアは概ね政権側の味方なので、この点を強調しない。この点の訴えだけでは効果が乏しい。
選挙戦略として不思議なのは、野党が、舛添都知事や甘利前大臣を推したことを徹底的に批判しない点だ。米国並みの露骨なCMが可能なら、例えば安倍首相と舛添氏の顔写真を並べて、彼らはグルなのだと訴えるのが効果的だろう。
実際に、舛添氏はイメージが悪いが、前回の都知事選で自公両党は、「勝てそうな候補」として彼を推した。甘利氏に至ってはなぜ検察がもっと積極的に動かないのか、理解に苦しむ国民が多いのではないか。
経済で有効な対案を出せない野党側としては、「政治とカネ」の問題に対する批判は有効な争点だろう。日本にとって、それだけで前向きな改善をもたらすポイントではないが、それ自体が重要な問題でもある。ある意味では上品なのだが、野党側はイメージ的に使える資源を十分に使い切っていない。