●国民の実感は「民主党政権時代よりはマシ」
現在の、景気も物価もパッとしない状況の原因は二つある。
一つ目は、中国経済の減速、ギリシャや英国の問題を含むEUの混乱と停滞、今ひとつ力強さに欠ける米国経済といった海外で起こったネガティブな変化の日本経済への悪影響だ。これらは、概ね、与党のせいでも、野党のせいでもない。
もう一つは、2014年に実施した消費増税の悪影響だ。こちらは、デフレ脱却を目指すさなかに「第二の矢」を自分に向かって逆方向に打つような愚挙であった。
こちらは、最終的には安倍政権の判断ミスだったと言えるのだが、消費増税を決めたのは愚かにも「三党合意」に絡め取られた当時の民主党政権だったし、民主党政権時代の幹部を有力ポストに残している民進党としては批判しにくい。
党派的な利害を離れて冷静に見るなら、株価はピークから見てずいぶん下がったし、物価上昇目標もまだ達成されていない。しかし、民主党政権時代の経済政策よりも、アベノミクスの路線はマシなのではないか、というのがおそらくは多くの国民の実感だろう。
安倍政権の支持率は、国民の「それにしても民主党政権はひどかった」という高下駄を履いているように思われる。民進党をはじめとする野党が、有効な対案のないままアベノミクス批判を争点化することは、有権者の民主党政権時代の失敗の記憶を呼び戻す逆効果の戦略になっているように思える。
国民の多くは経済の現状に満足していない。しかし、民進党の岡田代表が経済に言及するたびに、記憶から遠のきつつある民主党政権時代の状況を思い出すのである。総合的に、野党側にとって、アベノミクスの成否を争点とすることは、野党が与党の戦略に嵌っていると見ていい愚策だ。
例えば複数の海外要因によって円高・株安に動いた現在の状況で、金融緩和を民主党政権時代の状態まで戻そうとするなら何が起こるだろうか。おそらくは、超円高と株価・不動産価格の暴落だろうし、日本経済にはショック状態がもたらされるだろう。「危なくて、民進党に経済政策は渡せない」というのが、同党の参院選での訴えを聞いた筆者の感想だ。