
Facebookが6月29日からスタートさせた「自殺防止ツール」が物議を醸している。すでに海外の一部では運用が開始されていたが、同日に日本語版がリリースされたことが明らかとなったからだ。ユーザーが「自殺をほのめかす投稿」を発見した時、このツールを通じて同社に報告することが可能。同社は一般社団法人「日本いのちの電話連盟」やNPO法人「東京自殺防止センター」と連携し、24時間体制でユーザーの報告に対応するという。
ユーザーが報告すると「自殺防止ツール」は「(投稿した友達に)メッセージを送る」「別の友達に相談する」「専門家のアドバイスを受ける」という3つの対策を提示する。Facebookに報告された本人には、ログイン時に「あなたのことを心配している人がいます」との画面が表示され、友達や専門家への相談を誘導する仕組みになっている。報告者の名前は表示されない。
日本は国際的にも「自殺大国」と報じられており、SNSで自殺の前兆を読み取って食い止めるというFacebookの新たな取り組みを評価する声が上がっている。だが、その一方で「本当に効果があるのか?」「Facebookのイメージアップ策にしか見えない」といった厳しい意見もあり、さらに「そんなメッセージが表示されたら余計に生きるのが嫌になりそう」「小さな親切、大きなお世話」「余計に追いつめられるのでは」と逆効果を指摘するコメントも少なからず出ている。
「海外でも運用から数年しかたっておらず、今のところ本当に効果があるのかは不明です。正直、現状では企業のイメージアップに使われている側面が強い。また、個人の書き込みやプライバシーに運営サイドが過度に干渉することを疑問視する意見もある。自殺問題に取り組むのは非常に素晴らしいことですが、Facebookでは自殺をほのめかす内容以外も報告対象になっており、あまりに行き過ぎればSNSが相互監視ツールになってしまう懸念もあります」(ITジャーナリスト)
Facebookがユーザーに必要以上に影響を与えようとしたり、プライバシーに関与したりといった事例は以前からささやかれていた。米国など英語圏ではメイン画面の横に話題のニュースを表示する「トレンド」という機能があるが、今年5月にFacebookの元社員の証言によって「保守系ニュースを意図的に表示させないようにしている」との疑惑が浮上した。