その意味で「気象病」も「花粉症」も、「病」として括らない方がいい。弱い人間は「病」なんだからと自分への言い訳に使うようになる。
岸田首相と議員の国会でのやり取りに違和感を覚えたのはそのせいではなかろうか。
以前、聖路加国際病院院長だった日野原重明先生と福井へ講演に行ったことがある。空港から現地に向かう間も、先生は常に電話で秘書に指図をする。現地では講演の他に、趣味のオーケストラの指揮もする。合唱にも参加する。忙しくされている中で印象に残ったのは、ご自身はほとんど身体検査をしないと言われたこと。
日々刻々、医学は進歩している。機械類も新しくなり、今まで発見できなかったものが見える。その結果、知られていなかった病が見つかる。今まで病気とは言わずに見逃されていたものが、病として発見される。
だから検査は最小限にとどめることにして、自分の健康は自分でコントロールする──そうした意味だと私は理解した。昨今、さまざまな「病気」が増えることに私も疑問を持っている。
下重暁子(しもじゅう・あきこ)/作家。早稲田大学教育学部国語国文学科卒業後、NHKに入局。民放キャスターを経て、文筆活動に入る。この連載に加筆した『死は最後で最大のときめき』(朝日新書)が発売中
※週刊朝日 2023年4月21日号
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