佳子さまはクルリと回って
佳子さまは、訪問先にちなんだ装いを取り入れることもある。たとえば、9月下旬に鳥取県を訪れた際には、県内の山あいにある小さな工房が製作したイヤリングとバレッタが話題を呼んだ。
製作したのは、人口50人ほどの小さな集落にある「白谷(しろいたに)工房」。代表の中村健治さんは、廃園になった保育園を工房にして、15年ほど前から寄木細工によるアクセサリーや生活雑貨、家具などをつくっている。
9月21日に佳子さまが鳥取県の米子空港に到着。中村さんは、ニュース映像の佳子さまの耳元に「白谷工房」のイヤリングが揺れているのを見て、驚いた。いつ、どのようにして佳子さまのお手元に届いたのか、まったく分からないという。
その日の夜、佳子さまにあいさつをする機会があった。県知事が中村さんを寄木細工職人だと紹介すると、佳子さまはクルリと体を回して、髪を後ろで留めているバレッタを中村さんに見せてくれた。
中村さんがお礼を伝えると、佳子さまはニッコリとほほ笑みながら、こう話した。
「寄木の木材によって色が違うので、カラフルで素敵ですね」
カラフルなのは、使われている木材が「特別」なものだからだ。
中村さんの前職は大工。解体された古民家の木材や建築現場から出た端材が処分されるのを見ながら、捨てられる木を減らしたい、違う形で残したい、と考えるなかで出会ったのが寄木細工だったという。
長い年月をかけて成長した幹にある節や虫食いの穴、朽ちた枝も自然が作り出した表情だ。風雪に耐えながら、年月をかけて乾燥した古民家の木には、切りたての材にはない風合いがり、そんな木の個性も作品に取り込みたいと、工房を立ち上げた。
「アクセサリーの素材が、古民家で用いられた木や建築で生じる端材であるため、寄木の色に違いが出ることをお話したところ、佳子さまはよくご存じでした」
佳子さまとのやり取りは短かったが、工房のコンセプトに共感してくれたことに、中村さんは嬉しさを覚えたという。