代表選に出馬せず身を引くことになった馬場代表(左)と藤田幹事長

「吉村首相」の声が出るまで温存したかった切り札

 かつて維新の国会議員秘書も務めた選挙コンサルタントの藤川晋之助氏はこう話す。

「維新にとって“最後の切り札”が吉村知事。そのカードをこの時点で切るしかないということは、党の存亡がかかっていると見たからでしょう」

 維新の内部では昨年から今年にかけて、馬場代表が退陣もしくは顧問などに引いて、後任の代表には藤田幹事長が「暫定政権」として就く、という情報が何度か流れた。

「明日にも記者会見か」
 という情報で右往左往するメディアもあった。

 藤川氏はこう話す。

「馬場代表の代わりに藤田幹事長というのも、維新が分裂しないようにという暫定策でした。しかし、政治キャリアがあまりない藤田氏では結局党内をまとめられない。衆議院選挙で大阪以外では惨敗し、このままでは維新が消滅しかねない。ここで大阪組、国政組の内紛が大きくならないようにして党をまとめられるのは、世論から圧倒的な支持がある吉村知事しかない、となったのでしょう」

 維新の創立者だった橋下徹氏と松井一郎氏。2人が去ったあと、人気面でも精神的な支柱としても、維新の中心を担ってきたのは吉村知事だった。馬場代表が党の運営をできたのも、吉村知事を共同代表に指名し、吉村知事の意向をうかがいながら進めてきたからだという見方が維新内部にはある。

 2021年の衆院選、22年の参院選、23年の統一地方選と破竹の勢いで党勢を拡大してきた維新だが、今年になって首長選挙や衆院選での敗北が続いている。確かに今が、維新が国政政党として生き残れるかどうかの分岐点ともいえる。

 藤川氏は言う。

「維新で最も人気が高い吉村知事がいずれ代表になるというのは想定できた。しかし、維新はそれをできるだけ使いたくなかったはずです。政権交代の可能性が出て、吉村首相という声が出るまで温存しておきたかったというのが本音でしょう」

 吉村知事のもとで維新がまとまれば、再び支持を拡大し、党勢を回復できるかもしれない。ただ、次の「カード」はもうない。

 勝負に出た維新。存亡はいかに。

(AERA dot.編集部・今西憲之)

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