30歳になって初めての舞台は、熊林さん演出の「お気に召すまま」。共演者には、実姉である満島ひかりさん、「おそるべき~」で恋人役を演じた中嶋朋子さんもいる。
「愛情を持って僕に接してくれていた人たちと一緒に、一つの作品を作っていけることで、スタート地点に戻ってきた。再デビューする気持ちでいます」
「お気に召すまま」は、400年前に書かれた戯曲だが、「そこに描かれているのは、性差を超えた愛だったり、自然と人間の共生など、現代にも通じる普遍的なテーマだと思う」と満島さんは言う。
「何より、“As You Like It”というタイトルが好きです。思った通りに生きていけというメッセージにも思える。今って、自分の思った通りに進んでいける人、周りの情報に惑わされて自分を見失う人と、二極化が激しい時代になっている。特に若い人にはその傾向が顕著なんじゃないかな。長きにわたって演じ継がれている古典には、それだけの魅力があって、僕は、『お気に召すまま』から、“愛を持って自分の心に正直に生きよ”という強いメッセージを感じる。実際、腹を括って取り組んだ作品ほど、終わった後にエネルギーが満ちてゆく経験もしていて、30代に入った今、なんでもこい、っていう気分です」
(取材・文/菊地陽子)
※週刊朝日 2019年8月9日号