皇室で愛用される前原光榮商店の傘には、もうひとつ秘密がある。すべて手元にタッセルがついているのだ。タッセルを手に巻いて手元を持つと傘が安定し、風の強い雨でもグラつきにくいという。
佳子さまと紀子さまがお持ちの傘は、販売されている品で値段は2万6000円ほど。三笠宮家の瑶子さまがお使いだったのは、ジャカード織でボタニカル柄を描いた華やかな傘。「フィオーレ・ローズ」というシリーズで値段は2万2000円ほど。
お人柄がにじむのは、天皇陛下の雨傘だ。やはり雨に見舞われた2018年11月の園遊会でも同じ雨傘をお使いだった。前原光榮商店の品ではないが、こんなエピソードがある。
「平成の時代に、皇太子であった陛下の雨傘の修理を承ったことがあります。外国製の古い傘でした。詳しいことはわかりませんが長い年月お使いの品でしたので、留学時代にお求めになったものかもしれませんね」(前原さん)
修理しながら大切に使う陛下の姿勢に、傘の作り手である前田さんは、「さすが」と感銘を受けたと話す。
興味深いのは、秋篠宮さまの雨傘だ。
「今回の園遊会にはお持ちになりませんでしたが、公務の際に昭和天皇が愛用されていた黒い雨傘を何度かお使いになっていました。手元が特殊なつくりですので、映像を目にしてすぐにわかりました」
昭和天皇の雨傘が孫である秋篠宮さまに受け継がれているのだろうか。
招待者に手渡された傘に注目した皇室ファンもいるだろう。実は、普通の雨傘と形状が違う。手元が一般的なJ字ではなく、まっすぐなI字に近い形なのだ。
「雨傘の手元は手元がJ字型、日傘の手元はI字型に作られているのをご存じでしょうか。傘はもともと日よけの道具、日傘としてとして誕生しました。古来エジプトやオリエント地方では、厳しい日差しを防ぐ日よけとして傘状の道具が使われたのです。英国に渡った日傘は雨傘としても使われるようになる。雨傘の手元は、ステッキの影響を受けて持ちやすいJ字型に変化したと言われています」