AERA 2024年11月4日号より

サッカー関連事業を

 サッカー選手として注目を集めてきた岡崎さんだが、その一方で現役時代にサッカー関連事業をほかに二つ起こしている。二つ目は、地元の兵庫県でサッカーチーム「バサラ兵庫」などを運営する「マイスター」。そして三つ目は、ドイツを基盤にこれまで育てた二つのチームや事業をより強化する包括的な役割を担う「マイスターヨーロッパ」だ。

「新しく会社を作った理由の一つは、ヨーロッパで経験を積んだサッカー選手が現地に残る選択肢を作りたいと思ったからです」と岡崎さんは説明する。

 昨今は欧州リーグで戦う日本人選手は増えているものの、引退は日本で迎えるケースが圧倒的に多い。ネクストキャリアにおいても、帰国した方が解説者や指導者になれる可能性も高い。だが、貴重な海外経験が日本で上手く生かされていないことを長年課題に感じてきたと岡崎さんは吐露する。日本人選手が欧州でキャリアを築く一例として、自らが監督として一定の評価を得て他チームからオファーをもらうことを目指す。

 これまで国内外において20人ほどの監督のもとで競技をしてきた岡崎さんは、中でも高校サッカー部時代の監督だった黒田和生さん(75)から受けた影響は大きいと振り返る。

「年齢関係なく挑戦し続ける姿や、コーチや生徒たちに自由にやらせる器の大きさを見て『こういう人間になりたい』と思っていました」

 岡崎さんの人生において「挑戦」はキーワードだ。日本代表選手として50得点を記録、イングランド・プレミアリーグ所属のレスター・シティFC在籍時にリーグ優勝を果たすなど数々の偉業を達成しても、満足したことは一度もないと言い切る。

「目標を達成した瞬間に、新たな夢が生まれます」

 常に先々のことを考えている岡崎さんが、車の運転中も考え事をしていた時のこと。うっかり道を間違えてしまった。「隣にいた妻から『今を生きて』と突っ込まれました」と苦笑いをする一面も。

「僕は人の縁に恵まれています。僕の思いに共感し、実現してくれる仲間がいたことが大きいですね。自身のキャリアに不安を感じたことはないです」

 飽くなき向上心に突き動かされる岡崎さんの挑戦は、仲間と共にこれからも続いていく。(フリーランス記者・小野ヒデコ)

AERA 2024年11月4日号

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