格好をつけなくなった
「自分では“分析型”と言いましたが、お芝居に関しては『割と“肉体的”だよね』と言われます。確かに『こうだからこうでしょ』と理屈で言われるよりは、『こんなときはこういう気持ちになるよね』と、ざっくり身体の感覚を言われたほうが、すっと入ってくる。それは、ダンスをやっていたからかもしれません」
ダンスに熱中していた高校生の頃と、いまの自分。成長したところはどんなところかを尋ねてみた。
「だいぶ、格好をつけなくなった気がします」
格好をつける。どういうことだろうか。
完璧じゃないとダメ?
「それもそれでいいところだったな、といまとなっては思いますが、高校生の頃は、『完璧じゃないとダメ』とか、『練習しているところを見せたくない』とか、結構あったんです」
「苦労は見せずに、素晴らしいパフォーマンスを見せるのが格好いい」という考えにとらわれていた。
だが、ある撮影現場で“天才型”“演技派”と評される男性俳優が、本番前に人知れず練習を重ねていた姿を目にして、衝撃を受けた。
「泥臭く練習するのは真摯に取り組んでいるからだし、その姿が本当に素晴らしいと思った。恥ずかしがったり、『パッとできたら格好いい』という考えでいると、本番前もそこに意識が行ってしまう。泥臭くてもいいから、ギリギリまでその感情になれるよう、しっかり自分のなかで整えて最高のお芝居をするほうがいいですよね」
格好つけずに生きよう
プライベートでも、「泥臭く生きている人の方が魅力的だ」と感じるようになった。
「格好つけようと思っても格好つかないんだから(笑)、『格好つけずに生きよう』と思うようになりましたね」
取材が終わり、大きな荷物を抱える撮影スタッフがエレベーターに乗り込むと、私服に着替えた彼女が現れ、丁寧なお辞儀をして見送った。
高校時代、同年代の仲間たちがなぜ彼女にキャプテンを託したいと思ったのか。その人間性から少しわかった気がした。
(構成・ライター 古谷ゆう子)