英語を話さないベースボール・スター
上記の4つのトークショーはすべて全国に放送されているが、この『ジミー・キンメル・ライブ!』のみがロサンゼルスのスタジオから、ロサンゼルスの観覧客を前に生中継されている点は見逃せない。
東海岸のニューヨークから生放送されている他の番組と異なり、『ジミー・キンメル・ライブ!』は「地元」のコメディアンが「地元」のスタープレーヤーを「地元」の観客の前で語った「ローカル」なジョークと見ることもできる。
ローカルなスポーツの話題が、モノローグを通して、カメラの向こうのベースボールファンにも伝播し、広くアメリカ中のお茶の間に届けられた瞬間でもある。
そして、報道が加熱した3月26日には、ついにニューヨークから中継されているスティーブン・コルベアの『レイトナイトwithスティーブン・コルベア』(CBS)でもコントとして扱われる。
大谷がマスコミ向けに行った会見に、合成映像で「新通訳」としてコメディアンのブライアン・スタックを登場させ、メチャクチャな通訳をする内容で観客の笑いを誘った。
大谷がポップカルチャーになった
ここでジョークにおける扱われ方が、ジミー・キンメルのモノローグと、コルベアのコントで同じ角度だったことは興味深い。つまり、英語を話さないベースボール・スターという表象がこれらのジョークの根幹にあることは明らかだ。
7シーズン目を迎え、日常では流暢な英語を話すシーンが紹介されている大谷翔平。それでも、インタビューの際には水原一平が通訳をして彼の言葉を届けていたため、多くのアメリカ人がその「声」をリアルに感じる場面は多くない。
必ずしも野球に興味があるわけではないアメリカの視聴者に届けられた大谷翔平の表象は「声なきベースボール・スター」というものだった。
それでも、スティーブン・コルベアのショーに、大谷翔平が登場した現象はひとつのセンセーションと捉えることもできる。日本人のベースボール・スターが、アメリカを代表する番組でポップカルチャーとして「ネタ」になったのである。