お茶の間の関心の的に

 アメリカでは、スポーツ界でこそ大ニュースとして報じられていたものの、あくまでもスポーツの枠組みの中であり、一般のセクションにまでクロスオーバーすることは稀であった。

「稀であった」と記したが、私自身2022年からMLBの記者として記事を書くようになった立場から、連日注意深くテレビのニュースを観ていたが、CNN、NBC、ABC、CBS、FOXニュースのうち、一週間スポーツのコーナーを飛び越えて扱った局はなかった。

 ちなみに、この時期は「トランプの民事裁判の賠償金問題」や「ボルチモアでの橋崩落」「ボーイング社の相次ぐ不備」「トランプが聖書を発売」などのトピックが「メイン」のニュースとして扱われていた。

 アメリカでは、そのニュースが人々の関心をどれだけ集めているかを測る際、夜の帯トークショーの冒頭で司会がジョークにするかがひとつの「バロメーター」になる。

 実際、3月下旬から4月上旬にかけて、上記の「メイン・トピック」はNBCのジミー・ファロンとセス・マイヤーズ、CBSのスティーブン・コルベア、ABCのジミー・キンメルがこぞってネタにしてお茶の間に届けた。

ミズハラ、オオタニで笑いが起きる

 一方で、大谷問題をモノローグにして届けたのは、ジミー・キンメルの『ジミー・キンメル・ライブ!』のみだった。

 この年オスカーでも司会を務めた国民的コメディアンのジミー・キンメルは切れ味の鋭い語り口で知られるが、報道翌日の3月21日の番組冒頭で、スタジオに詰めかけた観客に向かってこう語った。

「野球のシーズンインが間近だね。でもドジャースの“7億男”大谷の通訳、イッペイ・ミズハラが解雇されたんだって。ミズハラが実際のところ野球に賭けていたかはまだわからないけど、ひとつ言えるのは彼の髪型がピート・ローズとそっくりだってことだ」

 と、ふたりの同じ髪型の写真を紹介すると会場には大きな笑いが起こった。

 その上で、

「ちなみに翔平はまだメディアに対して何も語っていない。だって通訳を解雇しちゃったから」

 と大谷のこともジョークにしてみせた。

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