党首討論に臨む(左から)国民民主党の玉木雄一郎代表、公明党の石井啓一代表、立憲民主党の野田佳彦代表、自民党の石破茂総裁、日本維新の会の馬場伸幸代表、共産党の田村智子委員長、れいわ新選組の山本太郎代表=2024年10月12日、東京都千代田区の日本記者クラブ

東京24区が最注目

 旧統一教会としては、岸田文雄政権から教団に融和的な政権に変われば、解散命令請求を取り下げられるのではと夢見たようです。それはさすがに無理だとわかり、となれば教団や関連団体の生き残りのためには政治家との関係が命綱になるので、これまでと変わらずコミットするだろうと見ています。

 衆院選では、石破首相が党内のバランスに気を使うのか、国民を見てその期待に応えるのか、政治家としての矜持をどう見せるのかを注視したいですが、数々の選挙区で強い逆風が吹くと思います。

 旧統一教会との接点が確認されている議員の選挙区で、最注目は東京24区でしょう。裏金問題も相まって比例重複なし、非公認、公明党にも見放された萩生田光一氏が逆風にどう抗うのか。陣営は必死の選挙戦を展開するはずです。劣勢とも伝えられる萩生田氏は公示日に有村治子参院議員や都連会長の井上信治氏を応援弁士に呼び、翌日に安倍昭恵氏を招聘して女性部の総決起大会を開くなど、非公認であることを感じさせない物量作戦に出ています。

 対する野党は、調整はありませんでしたが、共産党が候補を立てなかったことで立憲民主党の有田芳生氏への上積みが想定されます。実質的には萩生田氏と有田氏の一騎打ちの様相ですが、反萩生田票をどこまで有田氏が獲得できるか、萩生田氏が減らす票数をどこで食い止めるかの戦いになると思います。

 神奈川18区の山際大志郎氏も厳しいと見ています。15日の出陣式に行きましたが、報道関係者の入場お断りでした。取材から逃げ回る姿勢には疑問を抱かざるを得ません。公設秘書が教団関係者であるという疑惑もあり、旧統一教会との関係を根元から断絶できているのか、シビアに見る必要があります。

 ほかにも同じく神奈川4区の山本朋広氏や東京11区の下村博文氏、愛知4区の工藤彰三氏に加え、不記載問題がありながら公認され、旧統一教会との関係についてはなぜか追及を免れている福岡11区の武田良太氏など、注視すべき選挙区は挙げればきりがありません。

 政治家と旧統一教会との関係は「信教の自由」や「政教分離」といった論点にすり替えられがちですが、反社会的な団体と関係を持つべきではないという、至極当たり前の話が本質です。今回の選挙は、問題が顕在化して初めての“脱”旧統一教会選挙ですが、完全に切れてはいないというのが実情。石破首相が掲げる「納得と共感」は実現されるのか。有権者は厳しい目で判断すべきだと思っています。

(構成/編集部・秦正理)

AERA 2024年10月28日号

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