(styling  小蔵昌子  hair&make up  池田奈穂 cosutume pillings/little inc.     撮影/工藤隆太郎
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 東京国際映画祭に新設された、女性活躍がテーマの「ウィメンズ・エンパワーメント部門」。日本映画で唯一選ばれたのが「徒花-ADABANA-」だ。共に世界を舞台に活躍する二人に女性の社会進出について聞いた。

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 自分の身体が病気に侵されたとき、自分のクローンがいたら助かるかもしれない。そんな、もしもの世界を描いた映画「徒花-ADABANA-」で、臨床心理士役を演じた。

水原希子 自分が長生きするために、自分のクローンを作り育てる。映画と同じことが、どこかで行われていたとしても不思議じゃないほど、世の中には奇妙なことがたくさん起きています。昔だと近未来的に感じたことが、今では身近に感じられることが恐怖だと思いました。

自分のエゴも生まれる

甲斐さやか 私たち現代人は、成長するために無理やり何かを詰め込み、プレッシャーを感じながら生きていると思います。この物語に登場する「それ」は、男が自分の身に何かあった時のための替え玉として生きるクローンで、空虚な日々を送っているはずなのに、男が失った心を持っている。その心に対峙した時に男が感じたジレンマを通して、人間が生きる上で何が本当に重要なのかを考え続けてもらえるように描きました。

水原 私は自分の分身を殺めてまで生きたいとは思わないけど、いざ死に直面した時、愛する人と離れることを考えると、エゴが生まれてしまうかもしれない。生きること、死ぬことが選べたら誰でも葛藤してしまうと思います。自分では生きることを選ばなかったとしても、家族からは懇願されるかもしれない。そんなもどかしさが溢れている映画で、難しい役ですし準備が大変だろうと思いましたが、出演はすぐに決めました。

甲斐 答えは一つではないし、日によって変わることもあると思います。映画を見終わった後も持ち帰って、考え続けていってほしいと思っています。

──アイデンティティーの不確かさに苦しみながら成長していく難しい役でしたが、ご自身のアイデンティティーは?

水原 多国籍なアイデンティティーです。でも、まだ自分を探しています。日本にいた時は、「自分はこうだ」と思っていたことが、アメリカに行ったら自分に日本人という要素がたくさんあることに気付きました。日本、韓国、米国と、ミックスカルチャーの中で生まれてきたからこそ、日本の一般的な考えの中では「?」と思われるかもしれないし、逆もあると思います。

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水原さんが経験した悔しい思いとは