三田ガーデンヒルズ。最高分譲価格は45億円とも言われている(撮影/写真映像部・和仁貢介)

 平均化すると23区内の相場が総じて上昇しているような錯覚に陥るが、実際にはまだら模様になっており、争奪戦が激化して価格が高騰している物件は都心3区(千代田、中央、港)もしくは都心5区(前述の3区+渋谷、新宿)に集中しているという。

「他の区においても、利便性の高い物件は都心3区や都心5区を断念した人たちの間で人気になっています。しかし、最寄り駅までバスに乗る必要があるような、立地に難のある物件はなかなか買い手が見つからないケースも珍しくありません」(長嶋さん)

一方で供給が激減

 新築物件の供給自体が減っていることも、価格の上昇に拍車をかけているようだ。冒頭で触れた不動産経済研究所の調査においても、昨年の首都圏の発売戸数は前年比9%減の2万7千戸弱にとどまり、1992年以来の低水準となっている。

「実はここ20年間で、首都圏における新築マンションの年間発売戸数はピーク時の約9万戸からその3分の1に当たる約3万戸に激減しています。その背景には、住宅購入層の中心と目される30代後半の人口が団塊世代の半分以下にまで減少していることがあります。また、先に述べたように利便性の高い物件にニーズが集中していることを踏まえて、ディベロッパーは供給を都心に絞り込んでいるのです」(長嶋さん)

 都心で開発できる場所は限られており、少ないパイを複数のプレーヤーで奪い合えば、おのずと相場は上昇して用地の取得費用もかさむことになる。これらの要因が重なり合って、狂乱的な価格の上昇を引き起こしたわけだが、長嶋さんいわく、さすがに都心3区や都心5区の物件価格は、一般人がまったく手が届かない域まで高騰しすぎているという。

「マンション価格上昇の起点は2013年で、民主党から自民党への政権交代と第2次安倍政権がアベノミクス政策を掲げたことがきっかけとなりました。コロナ禍では下落に転じるとの見方もありましたが、歴史的な低金利が続いていることを背景に、いっそうの上昇を遂げています。その結果、一般的な所得層の人たちでも都心のマンションを購入できるというボーナスタイムはもう終わったと考えたほうがいいでしょう」(同)

 都心のマンションは今後も異常なまでの高値で取引され続け、庶民にとってはまさに“高嶺の花”と化す。手頃な物件を求めて物色の対象が次第に郊外へと広がっていき、それに伴って神奈川や埼玉、千葉にも価格の上昇傾向が波及しつつあるのが現在のタイミングだと長嶋さんは指摘する。

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進む価格の三極化