大塚食品で働く男性が昨年4月の異動後に働く事務所。管理職などに囲まれ、仕事がなく、一日中、誰ともしゃべらないこともあるという(写真:本人提供)

 異動先は全く畑違いのデスクワーク。管理職などに囲まれ、監視カメラが設置された事務所だった。しかも、仕事はほとんど与えられず、勤務時間の約3分の2は待機状態。何も仕事がない日もある。業務が過少だと訴えても、取り合ってもらえない。周囲の従業員と会話もほぼできず、他部署の人間とのやりとりは双方の上司の許可を得ないと話してはいけないルールも課されたという。

 会社では、トイレと昼食の時間は席を立つことができるが、後はひたすら、パソコンの画面を見て時間が過ぎるのを待つだけ。通報への報復人事としか思えなかった。

「自分だけ仕事をさせてもらえず、ただ同じメールを何回も読むだけ。することが限られるので本当につらいです」

通報の報復としての異動「一切ない」と企業側

 次第に精神的に追い詰められていった男性は、異動から4カ月後の23年8月、うつと診断され、翌9月から約4カ月間にわたって休職した。年が明けた今年1月に復職したが、状況は変わらず、ほとんど仕事を与えられない状況が続く。今も通院し、睡眠薬を飲まないと眠れない、という。

 会社は公益通報者保護法と安全配慮義務を守り、消費者への裏切り行為を改め説明責任を果たすべきだ──。そう考えた男性は5月、会社を相手に220万円の損害賠償を求める民事訴訟を大津地裁に起こした。男性は言う。

「放置したら、また同じことが起きます。自浄作用が働く会社に変わってほしい」

 大塚食品は本誌の取材に、内部通報について、通報者が不利益を被らないよう適切に対応を行っているなどとし、こう答えた。

「内部通報に係る案件に対する弊社の対応に何ら問題がなかったこと、内部通報に対する報復として違法な人事異動や異動後の取り扱いは一切行っていないこと等、弊社の主張を法廷にて行ってまいる所存です」(広報部)

(編集部・野村昌二)

AERA 2024年10月21日号より抜粋

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