「一緒に涙できる」言葉を紡げ

 「勝ってこいよ」という言葉は、努力を求めてプレッシャーを与えることなく、選手を「心配している」というニュアンスも排除している。まるで同志としての立場から語りかけているようだ。

 つまり、彼が単なる応援者ではなく、同じ目線に立って選手を支えていることを示している。

 こうした言葉選びは、スポーツに限らず、部下や友人が大事なプレゼンや勝負に臨む際にも使えるだろう。「頑張れ」とプレッシャーをかけるのではなく、「勝ってこい」というシンプルなメッセージを送ることで、相手に対する信頼と期待を的確に伝えることができる。

 「勝ってこい」は、勝利至上主義の言葉でもなんでもない。もし負けても、一緒に涙することができる言葉だと思う。

 日本社会において、トヨタ自動車はその存在感が非常に大きく、まさに一本足打法といえる状況になりつつある。そんなトヨタの強さの源泉は、章男氏が庶民感覚とのズレを認識したうえで、庶民感覚から遠ざからないために弛まぬ努力を続けてきたことにあるのだろう。

 彼の経営手腕は執念とも言えるほどのものであり、トヨタの成功を支える大きな要因である。このようなリーダーシップが、トヨタのさらなる成長を導いていくと言っても過言ではない。

(小倉健一:イトモス研究所所長)

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