「庶民感覚」掴むための章男氏の努力
小山氏のnoteにはこの後「バスタオル」をめぐる、章男氏の名言(迷言?)も登場するのだが、それはぜひ本文を読んで確かめてほしい。
章男氏が志向する「庶民感覚」はどこか浮世離れしている。一方で、彼の真面目さが笑いを誘いながらも、同時に人々に愛される理由になっていることは疑いの余地がない。
小山氏は、友人である大輔氏が「普通」であることに驚きと評価を感じている。そして、豊田家という特別な環境で育ちながらも「普通」でいることができるという点を「脅威」と表現している。
章男氏は自分なりの考えに基づいて、庶民感覚を理解しようと努めた。「普通」であることの重要性を子どもたちに教え、結果的にそれを身につけさせることに成功したのだ。勘違いした御曹司が目立つ世襲政治家の世界を思うと、こうした教育の重要性が非常に際立って感じられる。
章男氏のこうした庶民感覚とのズレと、そのズレを必死に修正しようとする生真面目さに、私は彼の経営者としての資質を強く感じる。
庶民感覚とのズレに関連して、まず思い浮かぶのは「トヨタイムズ」という自社メディアの存在だ。
トヨタイムズはつまらないが…
コロナ禍において、日経新聞をはじめとする既存メディアはトヨタグループの努力や成果をネガティブな見出しで報じた。章男氏としては内心、忸怩たるものがあったのだろう。彼は自らメディアを立ち上げ、トヨタの主張や実績を直接国民へ伝える手段を作り出したのである。
章男氏の行動からは、外部の評価に甘んじることなく、トヨタの真実を正確に伝えたいという強い意志がうかがえる。こうした愚直な姿勢が、彼のリーダーシップを支えているのだろう。
ただ、いくらトヨタが巨大な企業であっても、自社でメディアを立ち上げる必要が本当にあったのかは疑問が残る。
もう少しうまく立ち回れば、自分たちの意図を理解して報じてくれるメディアもあっただろうし、日経新聞も単に考えなしに見出しをつけただけかもしれない。広報を通じたコミュニケーションで、もっと歩み寄りの余地があったのではないかとも思える。
トヨタイムズのコンテンツの多くは、正直なところまったく面白みがない。しかし、章男氏の言葉やその思考法には魅力があるため、彼が登場する回だけはトヨタイムズの中でも非常に面白いものとなっている。