トヨタ自動車会長である豊田章男氏を「友達のお父さん」「間近で見たオッサン」として綴った、小山晃弘氏のnoteが「面白すぎる」「マジで良い話」と大きな反響を呼んでいる。トヨタの強さにもつながる章男氏の意外な一面とは?(イトモス研究所所長 小倉健一)
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「豊田章男の長男の友達」が記した衝撃エピソード
「贅沢ばかりをしてはいけないよ。だから、これから銭湯に行こう」
トヨタ自動車会長である豊田章男氏が、自分の長男の友人にこう語りかけたというエピソードがある。章男氏の素顔に迫る、非常に興味深い記事を見つけた。
《「友達のお父さん」として見たトヨタ会長・豊田章男さん》(2024年7月23日)というnoteの記事で、筆名「小山(狂)」こと文筆家の小山晃弘氏が執筆している。この記事では、章男氏の日常の一面が紹介されており、彼の親しみやすい人柄を垣間見ることができる。
ここでは、引用ルールの範囲内で最小限の内容を紹介する。無料で読める部分だけでも十分に楽しめるが、有料部分にはさらに鋭い論考が展開されており、非常に読み応えがある。
軽妙でユーモアあふれる内容と、深い洞察が織り交ぜられたこの記事は、抱腹絶倒でありながら、思わず考えさせられる内容となっている。一読を強くおすすめする。
小山氏は、豊田章男氏の長男である豊田大輔氏の中学・高校時代の友人だったという。
「贅沢ばかりをしちゃいけないよ」の真意
豊田大輔氏といえば、トヨタ自動車が建設中の実証都市「Woven City(ウーブン・シティ)」プロジェクトのリーダーの一人として知られている。将来的には、トヨタ自動車を背負って立つ重要な存在になるかもしれない。
ある日、小山氏と大輔氏、そしてその父・章男氏の3人がカヌーで川下りをすることになった。章男氏が同行することを知った「小山氏の家族」の反応も非常にユーモラスなのだが、割愛する。カヌー下りが終わった後、冒頭で引用した章男氏の言葉が飛び出す。
「贅沢ばかりをしちゃいけないよ。だから今から銭湯に行こう」
この発言に小山氏は少し困惑する。自宅のお風呂に入れば無料なのに、有料の「銭湯」を贅沢を戒める文脈で使う章男氏の発言が、彼の常識とはかけ離れていたからだ。また、小山氏は大輔氏の友人として、豊田家には巨大な風呂があることも知っている。
ここで小山氏は気づく。章男氏にとっては、自宅のような贅沢な設備ではなく、みんなで共有する銭湯こそが我慢をともなう体験なのだろうと。この解釈に妙に納得してしまった。
豊田家のようにトヨタグループを代々率いてきた家系では、世間とは異なる生活スタイルを送っているため、どうしてもズレが生じてしまう。しかし、章男氏はそのズレを修正しようとする「生真面目さ」を持っており、それが滑稽に見えるものの、どこか好感を抱かせるのだ。