「勝ってこいよ」章男氏の激励
たとえば、章男氏がオリンピックのアスリートに対してどのような言葉をかけるべきかを真剣に考え抜いた結果、「勝ってこい」というシンプルなフレーズにたどり着いたというエピソードは印象的である。
余談だが、インタビューの聞き手であるテレビ朝日出身のアナウンサーの章男氏に対するおべんちゃらが全編にわたって入ってくるのが、まったく余計だ。
私は、やはりメディアが聞き手となって(批判ありきということではなく)きちんとフェアに聞いてあげるのが、トヨタにとってもプラスになるのではないかと思う。
閑話休題。アナウンサーの受け答えをすべて削除して、章男氏の発言だけを書き起こしてみよう。
「トヨタアスリート(GTTA/グローバルチームトヨタアスリート)ってものすごく色んな種類の種目に出ている。メダル獲得が多いので目立ちますが、『お父さん』としては表彰台にのぼることを目的にはしていないんですよ。それよりも、そこに至るまでのプロセス、努力」
章男氏が本当に大切にしているもの
「メダルを取る、取らないは運もあるし、最終的な能力もある。能力には限界あれど、努力には限界なし。だからこそ、それをみんなに応援してもらいたい」
「アスリートってみんな、負けず嫌いなんですよ。だから出ていく時には単純に『勝ってこいよ』と言ってます」
「アスリートと語る時って多くを語っちゃダメ。一番わかりやすい言葉で応援してあげることがいいんじゃないかな。一番わかりやすい言葉ってなんだろうと考えた時に、出たきたのが『勝ってこいよ』だったんですよね」
アスリートにどんな言葉をかけるべきか、必死に考え抜いた章男氏。最終的にたどり着いた言葉は「頑張れよ」など努力を強調するものではなく、「大丈夫だよ」と安心させる言葉でもなかった。
「勝てよ」という上から目線の言葉でもなく、選ばれたのは「勝ってこいよ」というシンプルでありながらも、強烈なメッセージを持つフレーズだった。
興味深いのは、章男氏自身が本当に大切にしているのは結果ではなく、プロセスや努力そのものだという点だ。