AERA 2024年10月14日号より

 総裁選には5回目の挑戦。反主流派の石破氏が総裁に就いたことは、自民党裏金事件で逆風にさらされている状況をどうにか打開したいという厳しい現状を物語っている。

 石破首相は、自民党の副総裁に菅氏、幹事長に森山氏、総務会長に鈴木俊一前財務相、選挙対策委員長に小泉氏をそれぞれ起用。「挙党体制」をアピールしている。今後、選挙や国会対策などの党務は、森山幹事長が中心となって進められる。閣僚では林官房長官を続投させ、総裁選に出馬した加藤氏を財務相に、石破選対の責任者だった岩屋毅元防衛相を外相に充てた。石破首相は、政策推進の体制を整えたと強調している。さらに、安倍政治に対して厳しい批判者だった村上誠一郎氏を総務相に起用。石破政権の「脱安倍政治」を象徴する人事となった。

自民に改革の覇気なし

 石破首相にとっては、裏金事件で国民の信頼を失った自民党の立て直しが急務だ。しかし、現実の自民党を見る限り、政治とカネをめぐる問題や基本政策などで大胆な改革を断行する覇気は感じられない。むしろ、自民党は多くの点で弱体化の道を歩んでいるといえる。

 第一に今回の裏金事件は、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の問題と同様、組織のガバナンス(統治)能力の欠如を示すものだ。企業で同種の事件が起きたら、弁護士らによる第三者委員会を設置して真相を解明し、関係者の処分を行うのが当然だ。しかし、自民党は真相解明には及び腰で、関係議員の処分も不十分なものにとどまった。それが国民の不信につながった。

 第二に自民党の人材が枯渇してきたことだ。世襲の議員が増え続け、新たな人材が参入しにくくなっている。21世紀の自民党の首相7人のうち小泉純一郎、安倍晋三、福田康夫、麻生太郎、岸田文雄、石破茂各氏の6人が世襲。菅義偉氏だけが非世襲だ。今回の総裁選でも9人の候補のうち5人が世襲議員だった。こうした体質が自民党の停滞を生んでいる。

 第三に自民党の政策が時代遅れになっている点だ。働く女性から求められている選択的夫婦別姓制度については、総裁選で小泉氏らが提起したが、高市氏らは反対しており、簡単に実現しそうにない。財政再建や社会保障の改革も停滞している。実質賃金が伸び悩む中で、自民党の「経済無策」に国民の不満は募るばかりだ。

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石破氏と同い年