AERA 2024年10月7日号より

「世帯収入は下がった上での渡航でした。そもそもの選択肢が、妻子同行か単身赴任の2択でしたし、決断する期間も半年以内。女性活躍を推進する世間の流れとのギャップを感じましたね」(高橋さん)

 仕事がない現地での日々で時間を持て余す中で、海外駐在情報を提供する「駐在ファミリーカフェ(旧・駐妻カフェ)」に出合い、今は他の仲間と共に運営者として活動している。

 高橋さんと同じく駐ファミカフェの運営に携わる都内在住の会社員の伊藤絵美さんは、「駐在すると、働き方が“昭和”に逆行するんです」とこぼす。

 多くの駐在員は一人で多くのタスクを担うため、長時間労働が常で、休日は接待ゴルフに出かけてしまう。伊藤さん自身、当時1歳半の子どもと夫の赴任先の中国に渡ったが、現地では基本ワンオペ状態だった。

「それだったら、日本語が通じて住み慣れた環境で、仕事しながらワンオペした方が楽だと感じました」(伊藤さん)

海外生活をプラスに

 共働き世帯がマジョリティーになったが、海外赴任に関する制度になると途端に「長時間勤務の夫+専業主婦の妻」という旧来型の働き方と価値観があらわれるのだ。

 その根底に流れているのは「家族は皆一緒にいるべき」という価値観なのでは、と伊藤さんは指摘する。

「私自身そう思っている節がありました。でも時代は変わっているので、女性側の思考もより柔軟になっても良いのではと思います」

 海外生活は人生にとってプラスになる経験だ。にもかかわらず、積み上げたキャリアを諦めたり、帰国後の就職で苦労を強いられる駐妻たち。それは、日本社会や経済にとってもマイナスになると危機感を覚える二人は、今年10月、一般社団法人駐在ファミリーサポート協会を立ち上げる。企業と協力しながら、キャリア相談や就職支援の提供を目指す。

「多様な働き方やライフスタイルを認められる社会にしていけたらと思っています」(高橋さん)

(フリーランス記者・小野ヒデコ)

AERA 2024年10月7日号より抜粋

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