竹増貞信/2014年にローソン副社長に就任。16年6月から代表取締役社長
この記事の写真をすべて見る

「コンビニ百里の道をゆく」は、ローソン社長、竹増貞信さんの連載です。経営者のあり方やコンビニの今後について模索する日々をつづります。

【写真】この記事の写真をもっと見る

*  *  *

 厳しい残暑がやっと落ち着き、10月を迎えますね。

 この月の祝日と言えば14日の「スポーツの日」ですが、その少し前、10日は「銭湯の日」だとか。スポーツで汗をかいたあとの入浴は健康に良いことや、「1010(銭湯)」という語呂合わせからきているそうです。

 銭湯の数は昔より大幅に減ってきていますが、老舗の銭湯が東京・原宿の商業施設に銭湯をオープンして若い人に人気だったり、その文化は受け継がれているようです。

 私は小学校低学年の頃、家の風呂が故障したとき、父に連れられて近所の銭湯に行ったことがあります。

 知らない人たちに囲まれて初めのうちはまさに「非日常」。でも、大きなお風呂にゆっくり入り、あがってラムネを飲んだりしているうちに、だんだんと「安心感のある空間にいる」という感覚になっていったのを覚えています。

 知らない人ばかりだけど、考えれば皆、同じことをするためにそこに来ているんですよね。非日常のようで、実はしっかりと日常の中にあり、見知らぬ人たちとも不思議な一体感を感じたりする。そんな空間だと思います。

歴史が長い銭湯は外観にも風情がある

 ヨーロッパでは古代ローマの時代から公衆浴場が存在しました。皆で一緒に風呂に入り、あがれば平和で幸せな気持ちになる。そんな感情や感性が、そもそも人間の中にはあるのかもしれません。

 大人になってからも、いまは残念ながら閉店してしまった東京の祖師谷にある銭湯によく行っていました。もう30年ほど前の話。新しく住む土地で銭湯を見つけると、すごく嬉しくなり、安心してほっこり幸せな気分になっていたのを思い出します。いまは各家庭にお風呂があるような時代になりました。でも、わざわざ行く価値があるのが銭湯です。皆さんもこの10月は、ご近所の銭湯に足を運んでみてはいかがでしょうか。

AERA 2024年10月7日号