「税金の負担増が景気を下押しする」という反論もあるが、あまり心配する必要はないだろう。富裕層から集めたお金は消えて無くなるのではなく、再分配によって誰かが受け取ることになる。一般的に、富裕層に比べると、低所得者層の方が消費性向が高い(より高い割合で消費にお金を回す)。銀行口座で眠るお金が消費に回り、むしろ経済を活性化させる効果は期待できるはずだ。
「金融課税の強化は株価に悪影響を与える」という声も気にしなくていいだろう。株価を気にしている時点で、金融資産をたくさん持っている人である。貧困層が増えていることが問題なのだから、我慢してもらわざるを得ない。
重要なのは、徴収した税金をどこに配り、何に使うかという点だ。単に税金を取るか取らないかという議論ではなく、その使い道についてもっと議論を深める必要がある。たとえば、教育、医療、子育て支援など、国民の生活に直結する分野に再分配すれば、所得の少ない層の生活が改善され、結果として社会全体の消費が活発化する。
税金はただの負担ではなく、社会の仕組みを維持し、格差を是正するための大切な手段だ。「増税反対」と叫ぶ前に、再分配の意義を再確認し、持続可能な経済を目指すための議論を深めるべきだろう。
※AERA 2024年9月30日号