優勝パレードのバスには協力企業名が多数掲載されたが、終了後に寄付をした金融機関の名はもちろんない

「パレード後の寄付は何のメリットもない」

 これらの回答からわかるのは、寄付金の集まりが悪いため、片山副知事(当時)が但陽信金を訪問して寄付の増額を依頼し、但陽信金が他の金融機関のトップに直接働きかけて、寄付を集めたことだ。これは内部告発文書に書かれていた通りだ。ただ、内部告発にあった「補助金増額」との関係は、各信金とも否定した。

 他に取材した金融機関も、寄付は認めたが、補助金との関係は否定した。

 先の記事で証言をしてくれた金融機関幹部は、こう話していた。

「寄付すれば、パレードに使用する車にロゴが入るなど特典があるのですが、(パレードが終わってからの寄付なので)『何のメリットもない、カネを捨てる気なのか』と内部で声があがりました。いくら地域に根付く信金でも、終了したイベントが赤字で危ないと言われ、寄付するなんて聞いたことがない」

 実際、阪神オリックスの優勝パレードでは、寄付をした協賛企業の名前がバスや横断幕などに記されていた。それだけに、終了後の寄付には違和感がある。

 尼崎信金と30年以上取引しているという預金者に寄付のことを説明すると、
「斎藤知事への内部告発で優勝パレードのことはおかしい、税金の不当な支出ではと感じていた。パレードが終わってから寄付するのって金融機関としてどうなのか。何か尼崎信金が得することありますか。優勝パレードは大阪と神戸で開催され、尼崎市は関係ない。300万円の寄付は地域のためとは思えない。寄付するより、預金者などに還元すべきだ」
 と話した。

 先に紹介した刑事告発状では、被告発人とされている斎藤知事と片山氏だけでなく、金融機関も「背任罪の共犯になりうる可能性」と記されている。各金融機関は補助金と寄付の関係を認めていないが、認めると斎藤知事らとともに刑事罰を受ける可能性も考えられ、真相を明かしにくい状況ではある。

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