27日に投開票される自民党総裁選もいよいよ終盤戦に入り、候補者の動きも活発になってきた。特に小泉進次郎氏の動きには驚かされた人も多かったようだ。父・純一郎氏が進めた「郵政民営化」で“宿敵”ともいえる「全国郵便局長会」に総裁選での協力要請をしたのだ。この動きについて、政治ジャーナリストの安積明子氏に聞いた。
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自民党総裁選に出馬している小泉氏が9月20日、全国郵便局長会(全特)の幹部と面会し、党員票獲得への協力を要請した。さまざまな団体に集票依頼をしているだろうが、ついにここまで来たかという印象だ。
というのも、小泉氏の父・純一郎氏は首相時代に「郵政民営化」をぶちあげ、「構造改革なくして経済成長なし」をかけ声に実現させた。いわば小泉家と郵政は宿敵といえる関係にある。そして2005年の「郵政選挙」では造反した37人の自民党議員を「抵抗勢力」と呼んで公認せず、刺客を送り込んだ。野田聖子氏はその「造反組」のひとりだったが、今回の総裁選では小泉氏から「母親代わりに支えてほしい」と依頼を受けて推薦人となり、全特との面会にも同席した。
目的は全特が持つ「職域票」だ。約2万人の会員を擁する全特は、参院選比例区に代表を送り込み、自民党で上位で当選させている。
全特の党員票は林氏に
全特顧問で元会長の柘植芳文氏は、13年の参院選で42万9002票、19年の参院選では60万189票を獲得した。全特相談役だった徳茂雅之氏は16年の参院選で52万1060票、全特相談役で元副会長の長谷川英晴氏は22年の参院選で41万4370票を獲得した。
だが世間はそれほど甘くない。「全特が持つ党員票は約3万。それが今回、林芳正氏に入ることになっている」と、ある自民党関係者は打ち明けた。林氏は選挙公約「3つの安心。」で、「地域の振興に郵便局ネットワークを生かすために、郵政民営化法の改正を行います」と明言。9月10日に開かれた政策発表会見でも、「すでに(改正)法案が検討され、親の郵政と(子どもの)郵便がひとつになることも出ている」と述べている。