戦前、司法試験に合格しても女性は裁判官にはなれなかった。戦後、寅子は裁判官として働くが社会の女性差別はそのままだ。
「女性の話だけを書くつもりではなかったし、男性性の呪いなども書きたい気持ちはあったのですが、そうなるとどうしても女性問題に割く時間が減ってしまいます。ドラマでは寅子や女子部でともに学んだ女性たちの人生を追ってきたので、最後はまた女性の問題に戻ろうと思っていました」
「ト書きには書いて」と
ドラマは分業制で、チームでつくるものだ。
「チームの良いところは、プロデューサー、演出、美術、技術、音楽、そして俳優の方々が加わって、自分では思いもよらなかった景色を見せてくれるところです。一方で、仕方のないことではありますが、書いたセリフすべてが放送されるわけではありません。今回はとくに法律関係の考証の先生方から『セリフには入らなくてもト書きには書いておいてほしい』と言われた箇所もあるので、そういう部分も楽しんでもらいたいです。なにより私自身が、岡田惠和さん、坂元裕二さん、渡辺あやさんといった方々のシナリオが大好きで、ずっと読んできたんです」
「シナリオ集は売れない」と言われてきたが、「虎に翼」で、親しんだ人も多いのではないか。最終回まで、この破格の朝ドラを楽しみたい。(ライター・矢内裕子)
※AERA 2024年9月30日号