カフェワーカーが店の8割
東京・西新宿。企業のオフィスが立ち並ぶ一角に、ハンドドリップコーヒーがウリの、コーヒー好きをターゲットにしたカフェがある。だが、このカフェは、現在、カフェワーカーに占拠されたといっていい状態だ。
数年前まで、昼時はコーヒーを飲みたい会社員たちでにぎわっていた。PCを広げる客や勉強をする客も一定数いたため、よかれと思って電源コンセントを設置した。だが、コロナ禍が明けてから、「客層が変わった」という。店主の佐々木隼太さん(56・仮名)はこう話す。
「リモートワークが増えたせいか、PCを持ち込んでカフェに『長居』する人がとても増えました。休日には、コーヒー1杯で昼過ぎから閉店までいる人もいます」
コーヒーは1杯350円で、お代わりは200円。リーズナブルな料金設定にしたのは、「多くの人に自分のコーヒーを飲んでもらいたい」「値段を気にせず入れるオアシスでありたい」という気持ちからだ。
だが、現在、常連客はほぼ消え、カフェワーカーが客の8割を占める。多くのカフェワーカーは、せっかく用意したディナーメニューに見向きもせず、1杯のコーヒーでカタカタと仕事に精を出す。客席は15席程度。これでは利益を出すのは至難の業だ。
「ここは場所が悪かった」
「経営を考えると、回転率を上げるか、値上げするかしかない。値上げはしたくないので、心苦しいのですが、電源コンセントは取り外しました。混雑時は声をかけるようにしています」
それでも、店内はワーキングスペース状態だ。佐々木さんが大切にしたい、コーヒー好きの常連がほっと一息つきやすい雰囲気ではなくなってしまった。
「ここは場所が悪かった。場所を変えようかという話も出ています。いま、90分制の掲示を出そうか、迷っているところです」
リラックスできる空間にしたいから、ガチガチに制限をかけてギスギスしてしまうことに抵抗がある。
記者はカフェが大好きだ。ゆっくりコーヒーを味わいたいし、お店を応援したい。現代人の心のオアシスだとも思う。だが、出先で仕事をする場所がほしいときもある。これからカフェで仕事をするときには、なるべくケーキも追加で頼もう。そう思った。
(AERA dot.編集部・小山歩)