100人いたら100通りのイメージがある。佐野がどういう人物なのか、吉井目線でもずっとわからなかった。監督と奥平くんとのセッションだと思うんですけど、不思議な落ち着きもあって、すごくよかったです。

黒沢:最初、「わかんなくなったら聞いていいですか」と言われていたので、たくさん聞いてくるな、と思っていたんですが、聞いてきたのは「拳銃の持ち方」だけでした。

そのままでいる感じ

――作中ではSNSを通じて肥大する恨みや憎悪が描かれる。SNSとの付き合い方は?

黒沢:ネットはほとんど見ないんです。最低限、情報を得るために見ることはありますが、自分のことなんかは絶対見ない。ネットを見て不安定になった知り合いが何人かいるんですが、「見なきゃ絶対気にならなかったはずなのになあ」って。

菅田:僕もあまり見ません。いっぱい動いて食べて寝て、目の前の人に真摯に接していたら、見る時間がなくなります。

黒沢:目の前や周りにちゃんとした人がいるかは大切ですよね。ネットが救いになる場合もあるんでしょうけど。

――映画「Cloud クラウド」について、こう語った。

菅田:こういう映画が好きです。僕が普段よく見ている、バイオレンスな要素のあるサスペンススリラーでもあるので、楽しかったですね。

黒沢:また菅田さんとご一緒できた際には、吉井とは逆の、人を陥れていくような役を演じてほしいですね。最も恐ろしい男にもとてもハマると思います。吉井という役柄のせいもあったかもしれませんが、菅田さんは現場で、存在感を抑えている印象があって。何げなく菅田さんのままでいる感じがとても気持ちよかったです。

菅田:いつも大体そんな感じですね(笑)。撮影現場の空気を俳優が占める割合は大きいと思うので、荒ぶる役の時は荒ぶったり、多少プレイをすることはあります。ただ、今回は、黒沢組の方たちがすごく楽しそうで。黒沢さんのイメージを具現化するために和気あいあいとアイデアを出していて、とても活気のある現場でした。「今も作っている時間だから、それを見てよう」みたいな感じで、見ているのがすごく楽しかったんです。

(構成/ライター・小松香里)

※AERA 2024年9月23日号

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