島根県出雲市では今年度末の外国人の「5年定住率40%」を数値目標とし、教育や生活のケアなど外国人との共生に力を入れる
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 日本の高齢化率が35%に迫る2040年、働き手の中心となる現役世代(生産年齢人口の15~64歳)は今より1200万人減って8割ほどになる。働き手がいなくなる「8がけ社会」に、私たちはいかに立ち向かっていくべきか。AERA 2024年9月23日号より。

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「割が合わない仕事は受けない。今は俺が仕事を選ぶ側なんだからさ」

 そう話すのは、30年以上、建設業界の下請けの下請けで働いてきた東京都内の男性(55)は2023年夏、業界に見切りをつけてフードデリバリーの仕事を始めた。月収はコロナ禍の影響などでほぼ無収入だった状況から40万円を超えた。

 見切られた側の建設業界では、資材費の高騰と人手不足で採算割れとなり、工事からの撤退を強いられるケースもある。

 同様の動きは建設業界にとどまらない。「下請けの取り合いが起きている」。ゼネコンの担当者がこう嘆けば、食品工場の課長は「もう時給さえ上げれば人が集まるという状況じゃない」とため息をつく。

 人手不足は労働者に選択肢を与える裏側で、私たちが意識せず享受してきた「必要不可欠な仕事」の担い手を失わせていく。

 介護サービス待ちが長引き、路線バスは減便や廃止。老朽化した水道管はトラブルが相次ぎ、配送はなかなか届かない。しわ寄せの行き着く先は、私たちの生活である。

 人手不足に至る主たる要因は少子高齢化だ。遅くとも、00年代に突入した頃から日本社会が直面する問題として認識はされていた。

 それから24年が過ぎた。国は、高齢化対策として、年金や医療・介護などの社会保障分野で、十分とは言えないまでも給付と負担の見直しを進めてきた。社会保障費に充てるための消費税の増税も2度にわたって行った。少子化対策もまた、児童手当のような直接給付、働く親が子どもを預けやすくする保育園の拡充などの手は打たれてはいる。

 だが、どれも有効な解決策とはならず、高齢化は加速。少子化もいまだ出生率の下降傾向は変わらない。23年の「合計特殊出生率」は1.20で、統計がある1947年以降で過去最低だった。

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