AERA 2024年9月23日号より

3人に1人が65歳以上に街のインフラは自分で守る

 日本は2040年に高齢化のピークを迎える。全体に占める高齢者の割合が大きくなり、そんな社会を支える現役世代が減って、世代比率がアンバランスになる。国立社会保障・人口問題研究所の調査によると、16年後の40年、3人に1人が65歳以上の高齢者となり、現役世代は今より2割減る。

 社会全体のサービスの需要と供給で見たとき、現役世代が高齢世代に入り、高齢者がさらに高齢化していく中でサービス需要は増え続ける。一方で、主に現役世代が支えるサービスの供給量は激減していく。その推移をグラフにすると、ワニの口のように、上あご(需要)が少しずつ上がり、下あご(供給)はガクンと下がっていく。

 そうした「確実な未来」について、リクルートワークス研究所の古屋星斗・主任研究員は「いま起きているのは、単なる人手不足ではなく、今後も続く構造問題」と警鐘を鳴らしてきた。

 少子高齢化の結果として生じる最大の問題は、働き手の減少によるサービス不足にある。あらゆる業界で悲鳴が上がり、今後、年を経るごとに深刻化していく。同研究所の「未来予測2040」によると、40年に「供給不足」となる労働力は約1100万人にのぼる。

 後から振り返れば、「いま」が最も良い状況であり、年々困難が増す未来の「入り口」に立っているとの問題意識をもとに、十数年後の「未来」から「いま」をどう見るべきか。朝日新聞取材班は、新著『8がけ社会 消える労働者 朽ちるインフラ』(朝日新書)にまとめた連載企画で、人手不足が及ぼす影響の深層や広がりに迫り、その解決策や乗り越えるためのヒントを様々な識者と探った。

 例えば、介護。高齢化社会の中で最も担い手が必要とされる分野だが、無資格・未経験者でもできる清掃やレクリエーションなどの仕事を切り出し、有償ボランティアとして希望者とマッチングさせるサービスがある。

 街の電柱については遊びながら点検できるゲームが開発されていて、自分の暮らしを支えるインフラを自分で守る仕組みが生まれつつある。

国際ロボット展に人だかり、人口減の地方に外国人必須

 人手不足を乗り切るために、ロボットの活用も進む。

 昨年末、4日間で15万人が訪れた国際ロボット展。会場の東京ビッグサイト(東京都江東区)では、きらびやかなブースがいくつも目に飛び込んできた。

 自動配送ロボットやレストランの配膳ロボット、農業用ドローンに手術支援ロボット……。ビジネスに活用しようと、スーツ姿の人だかりがあちこちにできた。

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