急きょ日本に戻ることになり、両親は驚いた。フェンファンさんは大事な一人息子。このまま中国で就職してほしいという願いもあった。
「親は最初、大反対しました。当然です。でもすぐに認めてくれて、がんばれって送り出してくれました」
101人の練習生に選ばれたフェンファンさんは、長期の合宿生活に入った。その間は大学に行くことができない。留年も覚悟のうえでの参加だった。
「大学の学生部の方々には、多分めちゃくちゃ迷惑をかけたと思います。留学ビザの件でもすごくお世話になりました。でもメールで事情を説明すると『がんばってください! 応援しています』という返事があって、本当にうれしかったです」
経験の違うメンバーに刺激を受けて個性を磨く
オーディションの結果、最終合格者の11人に選ばれたフェンファンさん。INIとしてデビューして3年、実力と人気を兼ね備えたグループとして成長を続けている。大学での学びは、芸能活動にどう役立っているのだろうか。
「語学はもちろんですが、経済学を学んだことで社会ニュースにも興味が出てきました。そのおかげで情報番組などに声をかけていただくこともあり、それがグループの役に立てたらいいなと思っています」
一方で、早くから社会に出ているメンバーからも刺激を受ける。
「たとえばリーダーの(木村) 柾哉は、高校を卒業してすぐダンスの世界に入り、自分の力でここまできた人です。ダンスの実力はもちろん、考え方も大人。デビュー当時は特に、自分の未熟さを感じました」
そうやっていくつもの人生の岐路を乗り越えてきたフェンファンさん。進路について迷いがちな学生たちへのアドバイスを聞いた。
「だれでもそのつど一生懸命考えて、悩んで選択すると思うんです。でも、自分の選択にしばられすぎなくていいんじゃないかな。まずはその世界に飛び込んで、触れてみて、そのうちに何が自分に合うかが見えてくる。大学に入ってから、興味がある分野が変わるかもしれません。むしろ視野が広がるので、自分に合うものが見つけやすくなると思う」
そして大学に入ったら「利用できるものは全部利用しましょう」と笑う。
「困ったら先生や職員の方、友だちなど、周りの人を頼ることも大事。きっと助けてくれます」
(文・神素子)
※アエラムック「就職力で選ぶ大学2025」(朝日新聞出版)より