ロシア軍がウクライナ東部に攻勢を仕掛けている。2022年にロシアによるウクライナ侵攻が起きて2年以上が過ぎたが、終わりが見えるような状況ではない。ソ連崩壊後、民主国家として歩み始めた新生ロシアは、なぜ隣国を侵略できるような国になってしまったのか。プーチン大統領やロシアからはいったいどういった世界が見えているのか。朝日新聞論説委員の駒木明義氏がその内情に迫る。(新刊『ロシアから見える世界 なぜプーチンを止められないのか』(朝日新書)から一部抜粋、再編集した記事です)
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2023年5月に広島で開かれた主要7カ国(G7)首脳会議は、ウクライナのゼレンスキー大統領が急きょ参加したこともあって、ロシアが核を脅しに使って進めているウクライナ侵略の異常性を、改めて浮き彫りにしたように思う。
プーチン氏はウクライナへの大規模侵攻を開始した22年2月22日に公表したビデオ演説でも、核の使用を露骨にほのめかした。
「現在起きていることに外部から干渉する誘惑にかられているような者に対して、極めて重要なことを述べておきたい。介入しようとする者、とりわけ我が国、我が国民に脅威となる者は誰であれ、ロシアは直ちに対応し、あなたがたに歴史上一度も経験したことがないような結果をもたらすことを知っておかねばならない」
「歴史上一度も経験したことがないような」という部分が核を含意していることは明らかだろう。
実際、国際社会がロシアの侵略を止められない最大の理由は、ロシアが核を保有していることにある。そのことを熟知しているプーチン氏はことあるごとに核戦力を誇示し、欧米を牽制している。
そのロシアで、大変気になる世論調査結果が発表された。23年4月下旬、独立系のレバダセンターが、ウクライナ紛争と核兵器について質問したのだ。
「今回のウクライナ紛争でロシアが核兵器を使うことは正当化されると思うか」という質問に対する回答は以下のようなものだった。
- 当然正当化される 10%
- どちらかといえばされる 19%
- どちらかといえばされない 20%
- 絶対にされない 36%
実に29%もの人が核兵器の使用を容認するという結果は、私にとっては大きな驚きだった。
この世論調査では、実際に核が使われる恐れがあるかどうかについても尋ねている。