──テレビに映りこんだ腰元は転倒の衝撃か、大きくはれ上がっていた。満身創痍のなかで挑んだベストトリック5回目、着地を見事に決めて会場を大きく沸かせる。電光掲示板に表示された得点は97.08点。3年前の東京五輪に続く2大会連続の五輪金メダリストとなった。「奇跡の逆転劇」はパリ五輪を彩る名シーンとして多くの人の記憶に刻まれた。
堀米「腰や手首、かかと、もう予選を戦っているころからケガが続いていました。特にかかとのケガは治りが遅くて、だましだまし。滑っているときは痛みは感じないんです。五輪でもそうでした。でも、終わってみるといろいろなところが痛くなっていましたね。
最後は点数の計算はしていなくて、トリックを決めることに集中していました。今までにないくらいの集中ができたと思います。自分の位置からは電光掲示板がよく見えなくて、点数はわかりませんでした。でも、コーチや周りの反応を見て結果がわかりました」
(編集部・川口穣)
※AERA 2024年9月16日号より抜粋