すぐにでも最低賃金の引上げを!
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 あんな出来事があった、こんな話題があった…と記事で振り返る「あのとき」。昨年の9月ごろに、多く読まれていた記事を紹介します(この記事は2023年9月8日に「AERA dot.」で掲載されたものの再配信です。年齢や肩書などは当時のもの)。

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 2030年代半ばまでに最低賃金を1500円まで引き上げるーー。岸田文雄首相は8月31日、「新しい資本主義実現会議」でそんな目標を語った。経団連や日本商工会議所からは肯定的な意見が相次いでいるが……。岸田首相の発言について、経済ジャーナリストの荻原博子さんは「国民の生活実態を全く把握できていない」と言い切る。
 

ーー岸田首相の「1500円発言」に賛否の声が相次いでいます。

 2030年代半までという中長期的な目標に対して、正直呆れています。

日本は1990年代半ばからずっとデフレで、賃金は上がらず物価も上がらずの状態にありました。ところが、2022年から消費者物価指数(CPI)が上がり始め、インフレの時代に突入しつつあります。実際に2022年度のCPIは前年度より3%上昇。伸び率は1981年度(4%)以来、41年ぶりの水準でした。

 デフレのときは最低賃金がそれほど上がらなくても、国民はさほど困らなかった。しかしインフレに突入しているいまだからこそ、すぐにでも最低賃金の引き上げに取り組まなくてはいけないのです。

ーー先進国の中でも日本の最低賃金事情は最低レベルです。現在、日本は961円で、ドイツやフランスは1386円。韓国は991円です。

 日本でこのままの状態が続くと、格差が広がります。生産活動の中心を支えている15〜64歳を指す生産年齢人口が減少傾向にあります。2023年2月1日時点の生産年齢人口は7400万人で、総人口の59.4%まで下がりました。

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