山田尚子(やまだ・なおこ)/2009年テレビアニメ「けいおん!」で監督デビュー。2011 年「映画けいおん!」にて長編映画初監督を務める。「たまこまーけっと」「映画 聲の形」、2022年TVシリーズ『平家物語』、2024年リリース予定のショートフィルム「Garden of Remembrance」を監督。「きみの色」で、第26回上海国際映画祭金爵賞アニメーション最優秀作品賞を受賞。

普遍的なものは変わらない

―― 十代を描くとき、意識していることはあるのだろうか?

山田 年代が変わっても変わらない普遍的な心の動きは思い出せるし、何より私はさまざまな見方と向き合うのが好きなので、作品を作る時は人から聞いた話や自分が人に対して感じた敬意を思い出しながら進めていくことが多いです。

 普遍的なものは変わらない、と思っている。年は取るし、忘れることも多くなってくるんですけど、でも大切なものはたぶん変わっていない。それを意識しているとは思います。

 それから、成長も好きなものも悩みも、いろいろな容器がとても柔らかい世代なので、傷つけないように大切に扱うことを心がけています。でも、思春期にいる子たちは自分たちが「思春期だ!」とそこまで自覚的ではないと思いますし、あまり大人目線で描かないようにもしています。

ジブリに憧れ続けている

──監督デビューは、2009年のTVアニメ「けいおん!」だった。「映画 聲の形」、「リズと青い鳥」、いくつもの作品で、観る人の心を揺さぶってきた。影響を受けた作品はあるのだろうか。

山田 スタジオジブリの作品です。初めての出会いは「風の谷のナウシカ」。まだ、メッセージ性を受け取るような観方はできていなかったですが、アニメーションの快楽や主人公のカリスマ性、思いの強さに惹かれました。自分の年齢や観るタイミングによって作品の印象が変わるし、どのキャラクターに心を置きながら観るかによっても感じ方が変わります。ジブリ作品のたっぷりとした物理的運動の中にある本当と嘘みたいなものに憧れ続けています。そこに快楽が詰まっていると感じます。

──アニメーション監督として、やりがいや喜びを感じる瞬間はいつだろうか。

山田 スタッフの方々と、作品の世界観の設定や方向性を相談しながら、ゼロから1をつくろうと話し、それが一つひとつ構築されていくところでしょうか。

 どの工程にも、やりがいや喜びが存在します。一人ひとりみんなしんどいし、悩んでやっているんですが、完成した後に振り返ってみると、みんなで肩を組んで作品を作れているということが、喜びにつながっていると思う。

 ただ、映画だったら公開される、テレビシリーズだったら放送が始まった瞬間に、「観る人のものになる」という感覚が強くて、あまり「届いた!」という実感はないかもしれないです。

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