候補者乱立が予想され、自民党の総裁選に注目が集まっているが、立憲民主党の代表選も同時期に行われる。岸田政権は長らく低空飛行を続けたことから、本来ならば政権交代の可能性もあるはずだが、仮に政権交代が起きるとどんな政権になるのだろうか。シンクタンク「新外交イニシアティブ(ND)」代表で、弁護士(日本・ニューヨーク州)の猿田佐世さんが寄稿した。
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「12年たって、日本で政権交代の可能性が出てきた」
驚くかな、この発言を耳にしたのは米首都ワシントンである。
8月半ばまでワシントンに3週間滞在し、様々な人と話し続けた。米大統領選の話題であふれかえっており、日本の政治が話題にのぼることはほとんどなかったが、日本政治を専門とし、何十年も日本をつぶさに観察している研究者との面談の際にこの発言が飛び出したのである。
実際、裏金問題や旧統一教会などのスキャンダルにより自民党政権の支持率は下がるところまで下がり、政権交代を求める人が半数を超える世論調査もある。今年4月の衆議院補選では立憲民主党の候補者が3選全勝、続く5月の静岡県知事選でも立憲民主党と国民民主党が推薦する候補者が勝利をおさめた。7月の東京都知事選は現職の小池百合子都知事が勝ったが、それでもなお、今が、2012年の民主党政権退陣以降で立憲民主党を中心とした野党による政権交代の可能性が一番高い状態にあるのは間違いないだろう。
民主主義国家において政権交代は起きてしかるべきである。そもそも、各政策についての責任の所在の明確化、政策についての慎重な検討、透明性の確保や情報公開といった点から政権交代は望ましい。さらには、現在の日本で、汚職がはびこり、誰もその責任を取らない事態が横行し、政策議論もままならない政治が常態化しているとなれば、なおさらである。
しかし、この政権交代の可能性に関して、懸念される事態も起きている。