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 会社の辞令一つで、転勤や異動させられる“転勤ガチャ”“配属ガチャ”。言葉には「理不尽」というニュアンスが含まれるが、そう考えるのは新入社員だけではない。今や抵抗感を示す中堅以上の社員も少なくない。AERA 2024年8月12日-19日合併号より。

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結婚後、初めての深刻な夫婦ゲンカのきっかけが夫の転勤辞令でした」

 こう振り返るのは西日本在住の40代女性だ。小学生2人の子育て中、メーカー勤務の50代の夫に突如、東京への転勤辞令が出た。家族の帯同が前提のようだった。地元で長年、小学校の非常勤講師の仕事をしてきた女性は、なぜ夫のために今の仕事を辞めないといけないのか納得がいかなかった。父親の仕事の都合で転校を余儀なくされる子どもも可哀想だと思った。それで夫にこう宣言した。

「私は仕事を辞めたくないから一緒に東京へは行かない」

 すると、「じゃあ、しょうがないから単身赴任する」と言いだす夫。これにも腹が立った。夫は「会社の命令を拒否する」という考えがない「昭和脳」に洗脳されている。そう感じた女性は徹底抗戦に入る。

「辞めればいい」

「働きながら私一人で子育てするのは無理。東京に行くなら子どもを自分で説得して連れていって」。妻の猛烈な反対に困惑した夫は「一人で子どもを世話しながら働けない」とポツリ。この言葉に、女性はこうたたみかけた。

「それは私も同じ。自分はできないと思うことを、なぜ私に押し付けようとするの!」

 泣いたり怒ったり、必死で諭したり。女性は転勤に断固反対し、「辞令を断ると会社に居づらいようなら辞めればいい。私がフルタイムで働いて家計を支える」と夫を説得。夫もついに折れ、転勤辞令を拒否した。「頑張って家族の離散を防いだ」と自負する女性は約半年前の修羅場をこう振り返る。

「家族のために転勤を断る、という考えが端からない人を説得するのは至難の業でした。しかし、こんな昭和脳をつくり出したのは夫自身ではなく、これまでの社会や会社のあり方なのだと考えると、一層腹立たしく思いました」

 なぜ住む場所を会社の都合で変えないといけないのか。特に子育て世代に転勤を強いるのは酷だと感じる。夫はその後、管理職から降格。給与も大幅減額された。女性はこうした会社の対応にも理不尽さを感じている。

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中堅・ベテラン層も転勤への抵抗感は強い