東海大相模の杉崎成輝
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 熱戦が続いている夏の甲子園。過去を振り返ってみると、のちにプロ野球には進まなかったものの、大観衆を魅了した選手は決して少なくない。そこで今回はそんな夏の甲子園で記憶に残る活躍を見せながら、プロには進んでいない選手でベスト9を選出してみたいと思う。なお対象は2000年以降に夏の甲子園に出場した選手とした。

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 まず投手は吉永健太朗(日大三・2011年)を推したい。3年夏に出場した甲子園で6試合全てに登板し、そのうち5試合に先発。準々決勝の習志野戦、決勝の光星学院(現・八戸学院光星)戦ではいずれも完封勝利をあげるなどの活躍でチームを10年ぶりの優勝に導いた。140キロ台のストレートはもちろんだが、それ以上に強烈だったのがシンカーだ。一度浮いてから急激にブレーキのかかるボールはまさに“魔球”と呼べるレベルで、相手打者は度々体勢を崩されていた。

 捕手も候補が多く悩んだが、総合力の高さで地引雄貴(木更津総合・2008年)を選んだ。強肩もさることながら、長身でフットワークの良さも素晴らしいものがあり、甲子園でもファウルフライに対して見事な反応を披露。チームは2回戦で智弁和歌山に敗れたものの、バッティングでも2試合連続で2安打を放っている。早稲田大でも同学年の杉山翔大(元・中日)との正捕手争いに勝ち、4年春にはベストナインを受賞している。東京ガスに進んだ後は怪我もあって内野手に転向し、昨年限りで引退したが、長く中軸として活躍した。他の候補では打撃で大活躍した糸屋義典(駒大苫小牧・2004年)も印象深い。

 内野手は萩原圭悟(一塁手・大阪桐蔭・2008年)、林裕也(二塁手・駒大苫小牧・2005年)、河合完治(三塁手・中京大中京・2009年)、杉崎成輝(遊撃手・東海大相模・2015年)の4人。萩原は中田翔(現・中日)の1学年下で、新チーム発足当時は谷間の世代と呼ばれていたチームだったが、最終学年で急成長。4番打者として6試合で3本塁打、15打点と打ちまくり、見事に優勝を達成した。パワーももちろんだが、センターを中心に長打を放つ技術の高さが光った。卒業後も関西学院大でリーグ戦通算108安打を放つなど活躍を見せている。

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西尾典文

西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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