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 2023年、世界的な大ブームとなったChatGPTはインターネットの未来をも大きく変えようとしている。検索機能による広告収入で絶対的な収益力を誇っていたグーグルもビジネスモデルの変換を迫られている。インターネットに今起こりつつある大変動について解説する。(小林雅一『イーロン・マスクを超える男 サム・アルトマン』から一部を抜粋して再構成しています)

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生成AIに乗り遅れたグーグル

 2023年にChatGPTが生成AIのブームを巻き起こすと、この分野でOpenAIやマイクロソフトに後れを取ったと悟ったグーグルはAI開発事業の立て直しを図った。

 それまでの「グーグル・ブレイン」と「ディープマインド」という二つのAI研究部門を統合して、「グーグル・ディープマインド」と呼ばれる研究所へと一本化し、そのリーダーにはそれまでディープマインドを率いてきたデミス・ハサビスを任命した。つまり彼はグーグルが行うAIの研究開発を全て指揮する立場になったのだ。

 2024年2月、グーグル(・ディープマインド)は言語、映像、音声など様々な種類のデータを認識して処理できるマルチモーダル型のLLM「ジェミニ(Gemini)」をリリースした。

 これら多彩な認識機能と共に、このAIには一種の推論能力も育まれたという。

 ただ、ジェミニは「アメリカ建国の父(政治家)の肖像画を描いて」というリクエストに対し、本来ならジョージ・ワシントンやトーマス・ジェファーソンなど白人の政治家を描き出すべきところを、黒人など有色人種の政治家を描いてしまった。

 他にも「第二次世界大戦中のドイツの兵士(暗に当時のナチスを意味している)を描いて」というリクエストに、本来なら白人男性(の兵士)であるべきところを黒人やアジア系の男女を描くなどの誤りを示した。

 何故、こんな間違いを犯すのか?

 ジェミニのような生成AIの機械学習には、ウェブ上のテキストや画像等のデータが大量に使用されている。それらのデータでは「政治家」や「兵士」など特定の職業は白人の男性に偏っている傾向があるため、生成される画像にもそうした偏り(バイアス)が見られる。

 グーグルはこのバイアスを「プロンプト変換」と呼ばれる新たな手法で修正しようとした。つまりユーザーが入力したリクエスト(プロンプト)に対して、システムが自動的に「なるべく白人以外の人種で女性を描いて」という注文を付けて修正(つまり別のプロンプトに変換)してしまうのだ。

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