8月7日に記者会見する日本銀行の内田真一副総裁

「異常なことは起きるが、長くは続かない。よって、この売られ過ぎの相場は早晩、底を打って戻る。3万5千円あたりまでは早いだろう」

 現に、さっそく8月7日には終値ベースでも3万5千円台を回復。パニックが収まって買い戻しが入ったことに加え、「金融市場が不安定な状況で利上げをすることはない」と日銀の内田真一副総裁が明言したことも影響しているようだ。

 追加利上げの可能性が低下したことは、為替相場に円安要因として作用しやすい。ただ、依然として米国経済の先行きについては警戒感が高まっているため、今後も経済指標の結果に市場が一喜一憂する可能性は十分に考えられる。こうしたことから、前出の窪田さんは次のように予想する。

「日経平均が4万円を回復するまでには、相応の時間を要することになりそう。3万円程度まで下げる局面も考えられ、年末に3万8千円程度まで戻すのが限度でしょう」

 これに対し、広木さんはもっと強気のスタンスで臨んでおり、安値は9月の3万2千円で、12月には4万円回復を達成すると考えている。いずれにしても、ここまで触れてきたようにリーマン・ショック後のように深刻な低迷が続く可能性は高くないとみているようだ。

 しかしながら、冒頭でも触れたように投資経験の浅い人たちの間では、まだまだ動揺が収まらない様子。暴落直後に解約したり、積み立てを休止したりした人が少なくないという。こうした行動について、ファイナンシャルプランナーの深野康彦さんは注意を促す。

「1〜3月の相場が特に好調でスタートダッシュが好結果だっただけに、ショックを受けてしまったのかもしれません。しかし、そもそも投資とは短期間で結果が出るものではなく、長く続けることで利益を得るチャンスが得られ、下がっている局面でも続けることで利益を大きく増やせるチャンスが得られます。積み立てを継続したまま、今後は相場や運用状況の推移を見ないようにするのが最善でしょう」

 深野さんいわく、公的年金の積立金を運用する「GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)も相場が下がっている局面で買っているからこそ、高い実績を上げている」のだ。日銀の利上げに伴って適用金利が大幅に引き上げられたことから、「やはり安全確実な預貯金がベスト」と考える人も出てきているが、その点に関しても深野さんはこう述べる。「メガバンクが9月から0.02%の普通預金金利を0.1%に引き上げますが、100万円を預けても1年後の利息は1千円にすぎませんし、2%台の物価上昇率のほうが高く、預貯金だけの運用では購買力が低下していくのは明白。やはり投資にも資金を回さなければ、インフレに負けない運用は難しいのが現実です」

 ちなみに、GPIFが金融市場での運用を開始してから直近まで(2001年度~2024年度第1四半期)の収益率は4.47%だ。今回の暴落は反映されていないものの、数々のショック安を乗り越えたうえでの成果であることを認識しておきたい。