ブラックマンデーを上回る下げ幅となった8月5日の東京株式市場
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オリンピックだけではなく、金融市場においても記録は塗り替えられる。8月5日、日経平均の下落幅は4451円に達した。米国で発生した急落(ブラックマンデー)の翌日である1987年10月20日に記録した3836円安を超え、過去最大の暴落となったのだ。 世界各国が大盤振る舞いの策を打って急反発に転じたコロナショックはともかく、底打ちまでに約半年を要したリーマン・ショックが象徴するように、多くの人は今後の行方に対して不安を抱いていることだろう。特に1月の新NISA(少額投資非課税制度)スタートを機に積み立て投資デビューを果たした人は、心中穏やかではいられないのではないか。

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 もっとも、今回の大暴落のことを「〇〇ショック」と呼ぶ人はほとんどいない。その理由について、マネックス証券チーフ・ストラテジストの広木隆さんはこう説明する。

「ショッキングな事件が起きたわけでもないのに、突然、株価が大暴落したからだ。ここに相場の本質がある。ショックが起きて株が下がるのは、いわば当然。しかし、『誰の目にもわかる』ショックがなくても、株は下がる。しかも、暴落するのである」

 つまり、今回の暴落は一つの要因(ショック)が引き起こしたものではないということだ。何らかのショックが発生したわけでもないのに、とにかく株価が急落したことから、市場においてパニックが連鎖していった。そういった状況下では、「下がるから売る、売るからもっと下がる、という悪循環のループが回り続ける」(広木さん)。

 言い換えれば、今回の大暴落は複合的な要因がもたらしたのだ。松井証券の窪田朋一郎さんは、主に3つを挙げられると指摘する。「まず、それまでハト派的だった日本銀行の金融政策が豹変し、想定外の利上げに踏み切ったこと。次に、米国の経済指標が事前予想よりも弱く、景気後退懸念が高まったこと。さらに、米国の半導体関連企業の第3四半期業績見通しがアナリスト予想を大幅に下回ったことから期待が剥落し、今年前半の相場を牽引してきたAIバブルの雲行きが怪しくなってきたことが挙げられます」

 日銀の利上げを受け、為替相場では円高・ドル安が急速に進行。それまでの円安で、トヨタ自動車をはじめとする外需系企業の業績拡大期待(為替差益の上乗せ)が高まっていたことから、為替相場の反転も株価に冷や水となった。

 だが、8月5日の時点において、前出の広木さんはこう断言していた。

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