パリ五輪スケートボードで、14歳の吉沢恋選手の金メダル獲得、堀米雄斗選手の大逆転での連覇達成に日本中が沸いた。AERA 2024年8月12日-19日合併号より。
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「14歳の金メダリスト」といえば、岩崎恭子のことを思い出す。1992年、バルセロナ・オリンピックの競泳女子200m平泳ぎで金メダル。「いままで生きてきたなかで、いちばん幸せです」という純朴な言葉は、今も記憶に残る。
そして2024年、スケートボードで、14歳の吉沢恋(ここ)が金メダルを取った。岩崎が中2、吉沢が中3であることを差し引いても、吉沢は大人びて見えるのは時代の変化の鏡だろうか。
それにしても、前回の東京大会で当時13歳の西矢椛(もみじ)が金メダルを獲得し、今回は14歳の吉沢が続いた。スケートボードの世界でティーンエイジャーが活躍する背景には、この世代が小学生の時からスマートフォンが当たり前に存在したことも影響している。自分がマスターしたトリックをインスタグラムにアップし、全世界に向けて発信する。それを見た子どもたちが真似をし、さらに改良を重ねる。
トップ選手が集う環境
情報の「オープンシェア」が競技の進化を生んだが、吉沢は小学校の校則でSNSが禁止されていたため、頭角を現すのがやや遅れたという。しかし、トップ選手が集う環境が近くにあったことで、実力を伸ばし、ついには金メダルに到達した。
それでも、若くして成功できる土壌は、切なさも含む。帰国後の会見で吉沢はこう話した。
「4年後のロサンゼルス大会で連覇を目指したいです。スケートボードは選手生命が短くて、全体的な平均年齢も低いです。そういうところを覆して、大人になってもオリンピックの舞台に立てるんだってことを証明していきたいです」
14歳にとって、4年後の18歳は大人……忘れていた感覚を思い出した。そして報道陣から夏休みの予定を問われると、中3らしい答えが返ってきた。