資料を手に甲子園球場の実況席に座る中邨アナ。第92回大会(2010年)で(写真/朝日放送ラジオ提供)

 実況アナの技術は、しゃべるだけではない。第80回大会(1998年)準決勝の横浜(東神奈川)-明徳義塾(高知)。前日、PL学園(南大阪)との延長十七回の死闘で250球を投げ抜いた横浜のエース・松坂大輔はレフトの守備に回っていた。さすがにこの日の登板はないと思っていたが、八回裏、明徳義塾に6点差をつけられていたチームが奮起して2点差まで迫ると、九回表のマウンドに立った。

「松坂がブルペンで準備をして腕のテーピングを外してさあマウンドへ、という場面は自分で言いたいんですが、そこはずっと黙って『ピッチャー、松坂君』という場内アナウンスを聴取者に聴かせるんです。そうするとその後、静かだった球場がワーッと沸いてくる現場の生の音まで体感してもらえる。聴取者に想像させる『しゃべらない実況』というのもあると思っています」(中邨さん)

 磨き抜かれたラジオ実況アナの視点は、テレビでは見逃してしまうような機微にまで及ぶ。時には違った角度から高校野球を「聴いて」みるのはどうだろうか。
(小泉耕平)

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