本連載の書籍化第5弾!『鴻上尚史のおっとどっこいほがらか人生相談』(朝日新聞出版)

【鴻上さんの答え】

 WISHさん。苦悩してますなあ。くのーですね。

 WISHさんの気持ち、半分、分かります。僕は高校一年の4月、クラスのみんながあまりに大人しいので驚いたことがあります。進学校でしたから、各中学校から「勉強のできる良い子」が集まりました。(WISHさんの高校も、大学受験で「東大」なんて単語が出るのですから、同じような進学校じゃないですか?)

 入学式の翌日、昼食の時間になりました。みんな弁当を持参していましたが、周りの目を意識して、なかなか弁当のフタを開けなかったり、コソコソと隠すように食べ始めていました。ワイルドな中学校(?)から来た僕は、それがなんだか嫌で、思わず「食べるぞ!」と教室中に響く大声で叫んでから食べ始めました。

 完全に変な奴でした。

 それぐらい、「上品で良い子が集まった」雰囲気が苦手だったのです。

 ですから、WISHさんの違和感は半分は分かります。

 半分と書いたのは、「ほお。ということは、WISHさんの面白さは、『つまらない人達と一緒にいたら自分もつまらなくなってしまう』程度のものなんですか?『中学の時は面白い人が周りにいたから、自分も面白かった』だけで、WISHさん本人は面白くないってことですか?」と突っ込みたくなるからです。

 周りがどうであろうと、周りに影響されず、自分の面白さを磨くことが芸人の使命じゃないですか? えっ? 芸人じゃない?そうですか。

「クラスメイトは全体的にのほほーんとしてゆっくりで、私がツッコんでも笑いません」と、WISHさんは書きます。

 でもね、営業に出たら、客層が違うのは当たり前です。ノリのいい高校生や大学生相手だと、いつものテンポで話すだけでドッカンドッカンきますが、田舎のおじさん・おばさんを相手にしたら、当然、ネタを変えるのは、芸人の義務です。えっ?芸人じゃない?そうですか。

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