元県民局長のメッセージ
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 斎藤元彦・兵庫県知事のパワハラなど7つの疑惑を告発し、抗議の自死を遂げた元西播磨県民局長が生前、県の公式サイトに公務員のあり方や後輩職員を勇気づける多くのメッセージを残していた。最後は亡くなる4カ月前の今年3月。斎藤知事を意識し、人の上に立つ者の矜恃を強調していた。繰り返し「優しさ」を説く文面は後輩への思いやりにあふれるが、なぜかメッセージはことごとく削除された。

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 メッセージは10ある県民局、県民センターのトップが毎月、県民に向けてつづっている。統一した形式はなく、それぞれの裁量で自由に地域のイベントなどを紹介している。ほとんどは過去のメッセージを4~8年にさかのぼって読むことが可能だ。ところが、元西播磨県民局長のメッセージは現時点ですべてが削除されており、県のサイトからは読むことができない。

 AERA dot.は、公的機関のWEBサイトを収集する国立国会図書館のアーカイブから元西播磨県民局長の3年間のメッセージをすべて確認した。

 多くの県民局長がイベントを淡々と報告しているのに比べて、西播磨県民局長のメッセージは、自身の個人的なことに言及することも多く、親しみを込めたコラム風だ。県民向けでありながら、自分の部下へ向けたような発信もある。就任当初の2021年5月のメッセージは早速自分のことをつづっている。

〈小生、生まれも育ちもお隣の姫路。アウトドア派だった父親に連れられて、幼少期には、宍粟、佐用の山々や谷川、瀬戸内の海岸など自然豊かな西播磨のあちこちを四季折々に遊び回っていました〉

 夏休みの思い出を語る回もある(22年9月)。

〈終わってしまえば、あっという間の夏休み。少年時代、お盆を過ぎた辺りから、日々刻々と迫ってくる自由の終焉と一向に減らない宿題を前に、出口の見えないトンネルを少しずつ下っていくような暗い気持ちになっていた自分を今もふと思い出します。小学校6年生の夏休み末期、割り算の筆算の仕方を完全に忘れてしまっていて、一瞬、目の前が真っ暗になったこともありました。へーそうか、朝から晩まで遊び続けると、僕の頭は1カ月くらいでリセットされてしまうのか…〉

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