
引き取り手が見つからない遺骨が増えている。身元がわかっていても、親族に引き取りを拒まれることもある。生前に墓を購入していても、その墓に入れる保証はないという。
【データ】身元はわかっているのに…増加する引き取り手のない遺骨
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叔母の葬儀に立ち会えず
「骨を拾ってあげたかったと思っています」
都内に住む60代の女性は、北関東に住んでいた叔母(享年88)の葬儀に立ち会えなかったことを悔やんでいた。叔母は母の妹で、女性が幼い頃に同居していた時期があった。数年で家を出て以来、疎遠になった。
「私の結婚式にも参列してくれましたが、その後も特に連絡を取り合うことはなく、母が先に他界してからは安否もわかりませんでした」(女性)
ある日、叔母の住む自治体の職員から「成年後見制度(法定後見)を申請したい」と連絡があった。認知症で判断能力が低下したので、叔母の自宅を売却した資金で現在入居している特別養護老人ホームの費用をまかないたい、というのだ。
配偶者に先立たれて
職員の話によると、叔母は頸椎の手術を受けてから歩行が困難になり、80代に入ると寝たきりの状態になった。夫婦には子どもがおらず、介護をしていた2歳年上の夫が数年前に亡くなってからは、叔母の面倒を見る人は誰もいなかったという。
「戸籍謄本で甥、姪など3親等以内の親族全員に連絡を取っているとのことでした。私は後見人になるのは放棄して市長にお願いするといった趣旨のサインをしました。それからしばらく経って、別の部署から、叔母が亡くなったという知らせが入り、相続に関する書類が届きました」(同)
「中途半端に関わらないほうがいい」
最期は特養のヘルパーさんたちがみとってくれたそうだが、その先はどうなったのかわからない。
「葬儀に立ち会いたかったのですが、身内と名乗り出ると葬儀代の立て替えや死後の手続き、自宅の売却などの一切を引き受けざるをえなくなるかもしれない。夫に『中途半端に関わらないほうがいい』と引き止められた」
そう、伏し目がちに語った。
